MBC野球発信局-袖番号96 伊東勉のページ。

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No259 勝ったぞ東北代表が…TDK、都市対抗野球優勝!!!

 東京ドームで行われていた都市対抗野球は、今日決勝戦が行われ、秋田県にかほ市のTDKが、神奈川県横須賀市日産自動車を破り、初優勝を成し遂げました。TDK自体もそうですが、東北勢としても初めての都市対抗野球制覇となりました。
 TDKは、4回に高倉選手-赤べこ軍団-、岡崎選手の適時打で、7回には、阿部博選手の適時打と相手投手の暴投で2点ずつ取りました。日産は、吉浦選手の本塁打、青柳選手の適時打などで追いすがりますが、全5試合登板の野田投手が、日産の猛追をかわしきり、完投勝利を挙げました。


 この瞬間、私は右手をぐっと握り締めていた。東北のチームでも、ここまでやれるんだ、という事に。そしてTDK、ひいては東北野球が受けてきた屈辱を晴らした時でもあったからだ。

 TDKにとって、都市対抗野球本大会に出場できなかった2年間は、辛いたたかいを強いられてきた。03年、野田、仁部(後に広島カープへ)の両エースを擁して本大会に進出するも、7回に3点勝ち越され、2-5で初戦敗退。04年は、地元秋田で行われた二次予選には、当然のように進出したが、第二代表決定トーナメントでJTに敗退すると、第三代表トーナメントでは格が一枚下の日本製紙石巻に8回、4点を奪われ、逆転負け。さらにその年の日本選手権では代表決定戦2連敗という屈辱を味わった。

 そして、05年。この年は、ただ本大会に進出できなかっただけではない、とんでもない屈辱を二次予選で味わうことになったのだ。7月3日、場所は花巻球場。その事を記した拙ブログの過去の記事を再録する。

 TDKは、赤崎野球クラブとたたかっていた。前日に七十七銀行に敗れてはいたが、この日赤崎に勝てば、予選リーグはまず通過できる。試合数の少ない第一代表トーナメントに出るためには、できるだけ差をつけて勝っておきたい、と考えていたはずだ。が3-3と追いつかれた6回には、一気に突き放して6-3。勝負ありかと誰もが思ったが、赤崎は簡単に勝たせてはくれなかった。
 意地と意地とのぶつかり合い。滅多に怒らない赤崎のキャプテンが「絶対に負けないぞ!」とベンチで怒鳴ったその回、キャプテン自ら出塁し、8番打者のバックスクリーン横の同点ホームランに結びついた。
 9回。赤崎の2人の本格派投手が、TDKを6点に抑え、負けはない状態に持っていった瞬間、TDKベンチの空気は凍り付いていた気がした。自力での予選リーグ突破ならず…試合は、野田投手が怒りの投球を見せ付けて引き分けに持ち込み、続く試合で、体力を削られた赤崎が七十七銀行に敗退した事で予選リーグ突破は決めたが、十分なバックアップを受けたチームが、岩手一位とはいえクラブチームに対してのこの結果に、いい感情を抱いた人はいないだろう。結果、第二代表決定準決勝で敗れたTDKだが、この試合で相当白い目を向けられたのは想像に難くない。
(『No179 都市対抗野球東北大会最終日…夢潰えた者、リベンジ果たした者。』より)


 その第2代表決定トーナメントの準決勝でNTT東北マークスに9回に一挙4点奪われて屈し、日本選手権でもまたもやNTTに7回に4点奪われ、本大会に進出する事ができなかった。
 この年の末、うわさ話だったがTDK野球部の廃部、という噂も耳にした。ただ勝てないだけではない、いくらクラブ東北王者とはいえ、クラブチームに引き分けた事が、相当逆鱗に触れたのだろう。その年は、先に触れたとおり、ここぞという試合に、ことごとく競り負けてしまっていた。
 監督が変わり、勝利に執念を燃やす船木監督が就任。午前だけだった仕事は、定時の5時までとなった。船木監督はここ数年のTDKを見てこう思っていたという事を、インタビューで語っていた。
 「ここ数年は、野球をやらされていた感じだ」と。「負け慣れ」…そこからの脱却を目指し、選手たちは、自らのプライドの復活に向けて走りはじめていた。

 東北野球も、屈辱を受けていた。04年の都市対抗野球こそ、七十七銀行、JTがベスト4に進出したものの、東北全体のレベルでいえば、ほかの強豪地区からは格下に見られていた傾向があった。03年のJABA東北大会。東北から12チームが出場したが、JT、七十七、TDKが一勝をあげたのみ。残る9チームは力の差を見せ付けられ、敗退していった。04年の大会も12チームが出場したが、ほかの地区の強豪から勝利をあげたのは、JTとJR東北のみ(他に水沢駒形が自衛隊青森に勝つ)。05年からは予選リーグ→決勝トーナメントという形になったので、全チームの勝敗数で語るが、05年は出場6チームで5勝13敗、今年は出場7チームで7勝9敗だったが、優勝した七十七銀行が4勝したのが大きく、それを除けば3勝9敗…。クラブ選手権大会でも03年以降で勝ったのは、赤崎、赤べこ、秋田王冠のみ。
 「東北勢は安全牌だ」
 そう見られるのが、たまらなく悔しかった。

 そうして迎えた今回の大会。東北大会では、赤べこ軍団の台頭、七十七銀行の思わぬ苦戦とあいまって、白熱したたたかいが、繰り広げられていた。(詳しくはNo170No171No173No175No176No179で触れています)激しい火花が散る中、代表権をつかんだのは、JR東北とTDKだった。TDKの予選のたたかいぶりを書いた部分を再録します。

 あれから1年。その悔しさというのは、残った選手なら誰でも抱いていたに違いない。予選リーグ、三菱製紙八戸を一蹴し、七十七銀行をも破った。準決勝で赤べこに敗れはしたものの、これにキレもせず、山形しあわせ銀行、再度七十七銀行を破って、代表決定戦に臨み、そして、赤べこに対してリベンジを果たした。6試合中4試合に登板した野田投手をはじめ、選手たちの鬼気迫るたたかいぶりには、恐れ入った、というしかない。(No179より。)

 それでも、この時点では「何とか本大会で一勝あげてくれればいいな」と思ったに過ぎない。今からしてみれば過小評価だったが、先に触れた状況を考えると、こういう感覚でしかものを見られなかったかもしれない。

 本大会。伯和ビクトリーズに勝った。(拙ブログNo249)ま、これぐらいはやるだろうと。だが、次のJR東海は強敵だ。しかも、登板してきたのは、東北社会人野球を知る男、中須賀諭。元JTのエースだ。この両投手の投げあいは9回まで2-2とまったく互角。だが、延長10回「4強戦士」七十七銀行の高橋選手のサヨナラ安打。この試合は、4番の佐々木選手の本塁打赤べこから補強の高倉選手の安打を生かし、補強選手の加入で控えに回った岡崎選手が適時打を放つ。ルーキー田口投手の好投とあわせ、この勝ち方を見て思った。
 「こういう勝ち方が続けば、もしかすれば、もしかする。」と。(ここの部分はNo254

 次の試合は、優勝候補とも言われていたホンダ。この試合は、先に触れた田口投手が好投し、主役の佐々木弥選手が、補強の高倉、小町両選手が、脇役の高木選手が、そして、ここ数年苦しみ続けていた岩下選手が活躍し、自分のペースに持っていった。最後は、エース野田投手が締め、4強に進出した。
 その4強の試合-相手はまたも南関東日本通運。エースの野田投手がノックアウト。快進撃もここまでかと思われたが、今年はここまで見せ所のなかった藤田投手が試合を立て直し、控えに回った松本力選手の適時打で追いすがり、佐々木弥選手の満塁本塁打。さらに近年は代打に回る事の多かった阿部善隆選手のダメ押し本塁打。とうとう、決勝にまでコマを進めた。もうここまできたら、悔いなくやれよ。ファイナリストなんだから、と空を見ながら思った。
(ホンダ戦はNo255日本通運戦はNo257

 そして-5日夜。優勝が決まった日の夜。スプライトを片手に川岸に車を止め、星空を見ていた。一人一人が、それぞれに味わった「屈辱」に屈せずに、チームとしてそれぞれの試合に立ち向かった。そこには、レギュラーも、控えも、補強選手もない。まさしく「東北第二代表チーム」としての底力を見せた優勝であった。東北の野球人が生み出した優勝だと、私は信じたい。
 このチームには、学生時代に主役を張っていた選手がいるわけではなかった。田口投手は、後輩の影に隠れ大学時代は2勝だけ。それでも、鍛錬を積むことをやめなかったから、この結果を出せた。福田捕手も、よく聞くという名前ではなかったが、相手チームのことをよく調べ、野田、田口、藤田、関といった投手陣をよくリードしてくれた。
 そして、東北野球でも代表的な選手だった野田投手に佐々木選手。特に、野田投手はかつては140キロ以上の速球を武器にしていたが、勝てる投手になるため、とスピードを捨て、キレを意識するようになったという。佐々木選手は、どんな苦しい時期でも、自ら中軸の打者としてチームを支え続けた。いろいろな個性の選手に、チームとしての推進力が加わっての今回の優勝だった。私は、1時間ばかり、月夜を見ながら一人、淡々と祝杯をあげていた。

 状態は違うといっても、こういうチームと真正面からぶつかる事ができた事、それをベンチの中からとはいえ、直接たたかいに参画できた事を感謝したい。

 この大会は、TDKの優勝で幕を閉じた。だけども、他の東北のチームも腕を研いて、彼らに挑戦するだろう。岩手の野球界で、赤べこが無敵の強さを見せ付けていたが、ついに水沢駒形が止めた。または、山形のクラブ球界で、鶴岡が強さを見せていた時期もあったが、新庄がそれに追いつき、今年は山形のクラブ相手では無敗、という事もあったように、ライバルたちの、丁々発矢の勝負が、その地域の野球のレベルアップに結びつく。

 その意地とプライドのぶつかり合いを 私はずっと見続けていたい。


この勝利は、東北の野球人の
頑張りが作り上げたものです。
おめでとう、TDK!
ありがとう、東北野球!


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