MBC野球発信局-袖番号96 伊東勉のページ。

17年9月から移籍。こちらでは社会人野球など野球中心の記述をします。

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クラブ野球選手権東北予選進出記念特集記事-住田硬式野球クラブ物語。

 町土の9割を森林でしめる自然の町住田町。人口は2024年3月末時点で4742人。国民的スポーツの野球はこの地でも活発に行われ、その様子は同町野球協会が発行した記録誌にもつづられています。また、高田高校住田分校→住田高校と紡がれてきた青春年代の野球は軟式野球部時代に全国大会に進出、硬式野球部に変換して以降も1982年、1993年に岩手県大会ベスト4進出を果たすなど時折岩手の高校野球を賑わせる戦いぶりを見せてきました。

① 1987年、住田クラブのはじまり。

 1987年(昭和62)都市対抗野球クラブ予選を控えた4月末の毎日新聞に、住田クラブの結成を紹介する記事が載っていました。記事では「昨年開かれた住田高校野球部OB会で野球のレベル向上のために県内に誇れるチームをつくったら、との声から結成。運動公園グラウンド練習に励んでいる。特訓を重ね、恥ずかしくないチームに育てたい」との記述がありました。

 当時、気仙地区には1955年(昭和30)結成の高田クラブ、1956年(昭和31)結成の小野田セメント、創部は1963年(昭和38)で1984年(昭和59)に硬式に転換した赤崎野球クラブの3チームが在籍。チームを結成した住田クラブは都市対抗野球クラブ予選でオール軽米と対戦。0対17で敗退と苦いデビュー戦でしたが、同年の日本選手権岩手予選(当時は加盟チームすべてに参加資格あり)で赤崎野球クを8対6で破りベスト8に進出する活躍も見せました。

 チームは1994年に現在の「住田硬式野球クラブ」に改称。住田高校野球部や住田町出身の高校野球経験者が入部し、都市対抗、クラブ選、日本選手権、毎日旗秋季大会、大槌ロータリー三陸クラブ大会など各種大会に挑んで行きますが、結果に結ばないケースが多く、苦戦する様子も見てきました。

② 意を持ち入ってきた選手に居場所を-先達者の決断。

 2000年代後半には例年参加していた大会のエントリーがなされないこともあり、心配になった矢先の2009年頃に新人5人が入部してきます。この時期あたりから入ってきた新人選手を積極的に中心的存在として登用。長年チームを支えてきたベテランメンバーがその脇を固め、多くは試合の勝敗そのものにはつながらなかったのかもしれませんが「意思を持って入部してきた選手を活かす」というスタイルが築かれ始めました。

2010年の住田運動公園改修記念試合。
住田、赤崎、高田の気仙連合でフェズント岩手と対戦しました。

 選手の中には高校野球の経験がない選手もいて…もっとびっくりするのは住田町との直接の関わりのない選手もいたりして、それでも来た選手が楽しそうにプレイする姿は「1つの形」。住田町の硬式野球チームに集まった人たちが充実した時間を過ごせる場として永く続いていければ、と思い様子を見届けていました。

2011年都市対抗野球岩手県予選、一戸桜陵クとの試合は9人ギリギリで臨みました。
守備時はベンチ空っぽ。

③ 長年の活動が生んだ飛躍、そして成就。

 チーム創設以来、1987年から2019年まで公式戦通算11勝93敗のチームが躍進のきっかけをつかんだのは2020年に創設された三陸沿岸クラブ大会。初戦で赤崎野球クラブを32年ぶりに破ると、決勝戦の釜石野球団との試合でも競り合いに持ち込み準優勝。翌2021年に行われた岩手クラブ選手権(クラブ野球選手権が春開催となりこの年は単独開催)では準決勝に進出。一時は水沢駒形からリードを奪うなど奮闘し県ベスト4。東北クラブカップ大会への参加権利も得ました。コロナ感染の影響により実際の出場はなりませんでしたが、この2年間の戦いは住田硬式クの変化を表したものとなりました。

2021年岩手県クラブ選手権・住田-水沢駒形戦。
途中主力選手を負傷で欠きながらも駒形に食らいつきました。

 2009年あたりから入部してきた若手選手の登用した時期に20代前半の選手を監督に起用。長年支えてきたメンバーはその若手選手を支えるのに懸命に努め、「楽しい住田野球」を経験してきた選手がまた新たな選手を誘う-この循環が、これまでは実績もあり、高校野球部のツテから他チームに向かわせていたメンバーを住田硬式クラブに引き寄せるものとなりました。

左写真は2020年三陸沿岸クラブ大会表彰選手の吉田凛之介投手。右写真は20代半ばから
監督を務める吉田康平選手。2人とも盛友クラブ戦で粘投しました。

 とはいえ社会人野球は3年もすると選手個々の状況も変わるわけで、そういう意味からのチームのメンバーの変遷あるいは戦術の変動も免れず。時々の試合では大差での敗退も喫してきましたが、「野球を楽しむこと」のリスペクトは欠かさずに努め、投打が噛み合った今大会では江刺、盛友とクラブ選手権の東北予選を経験したチームを破り、ついにクラブ選手権東北予選進出という大事業を成し遂げました。

④ 「俺らでもできる」という姿を見せた住田硬式ク。

 社会人野球…特にクラブチームの活動も盛んな岩手県。町村の部分でもかつての炭鉱チーム(松尾村・松尾炭鉱、野田村・野田玉川)以外に一戸桜陵クや前沢野球倶が上位大会進出や大会優勝を成し遂げるなど活躍する様子も見てきました。一方で石鳥谷(イシドリヤ・フロンティア)、オール軽米、平泉ク、衣川ク、九戸ク、大槌球友→大槌倶楽部のように規模を保てなくなり硬式社会人野球から撤退・解散する様子も。

 ここまで記してきた目線で住田硬式クには永く活動してほしいと思っていたところにこの偉業。そして1ヶ月後には東北の強豪との対戦が待ち構えています。対戦した時は勝ちに行くというのはわざわざ言わんでもいいくらい当たり前のことですが、今は「対戦相手チームでもいいプレーがあればリスペクト」を旨とする住田硬式クラブが東北の舞台でどういう立ち振る舞いを見せるか楽しみです。

 そして、長年このチームを支えて、継続させてきた住田硬式野球クラブメンバーに敬意を。住田町の野球に関わる方々の熱意が生み出した結晶発揮にあと1ヶ月の準備、頑張ってください。

PS クラブ選一回戦の日、私の口上に反応いただいてありがとうございました。

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