MBC野球発信局-袖番号96 伊東勉のページ。

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十一の巻 社会人野球・伊東版名勝負『2003年クラブ野球選手権岩手予選準々決勝・赤崎野球クラブ-水沢駒形倶楽部。』

 あの日まで、01年毎日旗大会県予選優勝、01年都市対抗県大会4位、03年同3位と好結果を出していても、どうにも一歩引いてものを見ていた自分がいた。それは、他のチーム-殊に水沢駒形-が強いという結果を様々な場面で見せつけられていたからだ。
 だけど、あのギラつくような暑い日のたたかいは、一つの大きい勝利という結果に収まらず、自分の心の中で「赤クは岩手のチームの中でトップクラスと認識していいんだ」という自信をも植え付けた、自分も、グラウンドでたたかった両チームもまさに燃えた大勝負となった-。

1.2003年6月22日 FROM大迫。

 前日から始まっていたクラブ野球選手権岩手県予選。
 赤崎野球クラブは2日目からの登場となり、大迫球場で勝ち上がればダブルヘッダーでたたかう事になっていた。私はと言えば、コンビニの夜勤こそ休めはしたものの、新聞配達に思いの外手間取り(配達範囲は三陸町全体)大迫球場に着いた時には、既に第二試合が始まっていました。

 第一試合は水沢駒形と隣町の高田が対戦。
 試合が終わったばかりの知り合いの選手から「惜しくも負けたよ。対戦できなくて残念だ」という言葉を交わしながらスタンドに。スコアボードには「MS」の方に3の数字が早々と乗っていた。対戦相手は盛友クラブ。元プロの猪久保吾一さん加入後、力を伸ばして来たチーム。簡単に勝てるとは思っていなかったが、初回から苦戦を強いられるとは思っても見なかった。

 この試合登板した佐野清隆君は、都市対抗時に爪に変調を来し、そこから投球のペースを乱していた。1回裏に佐藤琢哉君、磯谷長栄さん、泉邦幸君の適時打で逆転するものの、4回にも2安打2四球で同点に。5回から佐々木慶喜君がリリーフし、その裏に村上修君とルーキー倉本君の適時打でするものの、6回にまた追いつかれる試合に。

 しかし、この試合赤崎は打ち負けない。取られたら取り返す試合ができたのが最後に効きました。8回に盛友・松本直樹さんの本塁打で勝ち越しを許しましたが、その裏に平野誠君の三塁打+1エラーで追いつくと、さらに連打で畳み掛け、最後は木下清吾さんが後10センチでホームランという強打で11-9。山本淳一君が9回の盛友の反撃を0に。
 試合状況が7変する試合を制し、第三試合の進出、水沢駒形とのたたかいに進出しました。
2.電光石火のツーランスクイズ

 しばしのインターバルをおいて行われる準々決勝。
 先発投手は、赤崎がエース山本淳一君、駒形もエース新田忠正君。
 クラブチームの中では実績NO1、2年前の全国大会では準優勝という強力すぎるライバルチーム。しかし、赤崎も都市対抗では3度この駒形を破っている実績もあった。
 でも…文頭にも書きましたが、この時はまだ、私の心の中では「まだ駒形が上」という意識がありまして。試合には勝っていても、駒形に対する“恐れ”はまだ消えていませんでした。

 この2人の投げ合いとくれば、ただでは終わらないのがこのカード。
 お互いに“簡単には点は取れない”というビリビリとした意識が充満していました。
 初回、2回と駒形は1安打放つものの0。そして2回、試合は思わぬ所から動きはじめました。

 新田君は体を投げ出すようなフォームから勢いよく腕を振り、居合切りの様にボールを繰り出す本格派投手。この特徴あるボールを「ファルコンダイブ」と勝手に異名作っているのは私ですが、打ちにくいことこの上ない投手です。
 ただ、弱点もありまして、時折コントロールが効かなくなる場面もあります。この2回のときもそう。修君には死球、長栄さんには四球、倉本君はライト前にヒットを放ち、満塁の好機を作りました。

 打者は泉君。
 攻守に渋い動きを見せる“職人”が、ここで仕掛けた策はスクイズでした。
 修君ホームイン、一塁で泉君がアウト…で済まなかったのがこのプレー。
 長栄さんも一気にホームに突っ込んで来ました。

 高校時代から一番を打っていた三拍子そろう好打者。特に走塁や守備などで、一時のスキを見逃さずチームに効果的な動きができる選手。その動きは、相手が駒形でも鈍る事がありませんでした。一気にホームを陥れ、2点目をあげました。
 一点を争う試合で大きい先制の2点。
 流れをまず、つかむ事には成功しました。
3.このままでは、終わらない。

 赤崎は4回にも4番の木下さんの安打、5番の村上修君の二塁打、さらに長栄さんの死球で満塁と責め立てたものの、ランダウンプレーで三塁ベースに二人がいてしまい、対処をあやまり2人共アウト。以降は好機らしい好機も作らせてもらえません。
 一方で駒形は毎回のように一人以上はランナーを出し-打線の上位、下位は関係なく-誰もが必死にプレッシャーをかけ続けた。

 6日前の都市対抗予選。駒形は淳一君の前に4安打に抑えられ敗れていた。同じ相手に、二度も負ける訳には行かない、という気合が、試合の流れを変えつつあった。
 それでも何とか勢いを押し止どめていた淳一君と赤崎ナインだったが、9回、それまで0に抑えられていた駒形の逆襲がはじまってしまいました。

 先頭の佐々木力さんが安打後、4番の深井君のタイムリ二塁打。高橋君の凡打で一息つくかとも思われたが、加藤武さんの二塁打で同点。さらに千葉光輝さんの安打でランナーを進めたものの、及川君は凡打でツーアウト。
 9番の加藤充敏君は、登録は投手。野手としての彼を認識していなかったので「よし、これで何とか…」と思ったが、野球は甘くなかった。打球はサード。ルーキーの倉本君が必死にさばきましたが、充敏君の足が一歩勝りました。
 この間に武さんはホームイン。3-2。
 とうとう駒形に逆転を許してしまいました。


 5回以降は好機は作れなかった赤崎。とうとう逆転も許し、ペースを駒形に握られてしまいました。そして、9回裏。
 先頭は“クラッチヒッター”佐藤琢哉君。
 勝負を決める場面で、ことごとく期待に応えてきた琢哉君が2ストライク後にライトへ打球を飛ばし二塁打に…しかし、この日のライトはこれまで一塁を守ることが多かった力さん、セカンドは経験は多くない充敏君。このわずかな「付け入るスキ」を見逃しませんでした。

 結果から言えば、この2人のダブルエラーで琢哉君は一気にホームに帰って来ました。3-3、同点。しかし、次の試合に進むには、あと一点取ることが必要。さらに修君、長栄さんの安打、泉君の四球で満塁にまで追い詰めますが、新田君は踏ん張り、平野君のセカンドゴロでチェンジに。
 エラーした二人が、その回の内にすぐリベンジ(打球を処理)した事で、エラーをしたという負い目をリセットできた事で、もともと簡単に勝てるとは思っていない相手でしたが、まだ長いたたかいは続くな、と思いました。
4.決着。

 試合は延長戦に。両チームともにこの日は一試合たたかって、その上でこの熾烈な試合をたたかっている。1時半に始まった試合、一日で一番暑い時間帯での試合。スタンドにいる自分でさえ、選手の消耗と、それに反比例する情熱は見えて~特にこの試合は~とれました。
 10回表、駒形の攻撃は三者凡退。
 10回裏、赤崎の攻撃も三者凡退。
 11回表、武さんの安打は出たものの、得点0。

 「このままじゃ、決着つかないんじゃ…。」
 11回裏。先頭の木下さんがライトフライ。
 チーム一の打者-木下さんは甲子園で「大高旋風」が起こした時のレギュラー、法政大学でもレギュラー-でも、打開策が築けない。このままいつまで続くか、と思われた時に透き通るような音が聞こえました。

 カキ------ン

 修君が思いっきりぶっ叩いた打球は、レフトスタンドにぶっ飛んで行きました。
 ついに決着の…サヨナラホームラン

 この一週間、都市対抗野球も合わせると、10日間で11試合をたたかうという強行軍。私も大声の声援を送っていましたが、この日の中盤にとうとう声をつぶしてしまい…しかし、自分の事はどうでもいい。グラウンドにいる選手たちは、その何倍ものダメージを負いながらたたかい続けました。

 殊に、修君は淳一君、佐野君という本格派投手の球を受け続け、とうとう左手親指の付け根を痛めてしまっていました。それでいて「何、大丈夫ですよ」と平然とマスクをかぶり続け、たたかい続けた。同じ捕手として、代わってやれないのが見ていて辛かったけど、そうしてたたかい続けて来た結果、岩手最大のライバル・水沢駒形を互角のたたかいでやぶった。

 この激烈なたたかいを制した喜び。
 より上のたたかいに挑める事ができる喜び。
 そのうれしさを、両手を突き上げて、声にならない叫び声を上げて表現してました。
 5.その後。

 あの壮絶な試合のリサルトは以下の通り。

水沢駒形倶楽部 00000000300 3
赤崎野球クラブ 02000000101 4
二塁打 高橋、加藤武、深井(駒形)
     村上修、佐藤琢(赤崎)
本塁打 村上修(赤崎)

【水沢駒形倶】8加藤浩 6千葉盛 9佐々木力 3深井 D高橋 2加藤武 7千葉光 5及川将 4加藤充 1新田 (途中交代)佐藤辰(佐々木力・8回代打)千田長(佐藤辰・9回から9)
【赤崎野球ク】9→11回8大畑 6生形 8佐藤琢 7木下 2村上修 D磯谷長 5倉本 3泉 4平野 1山本淳 (途中交代)磯谷幸(佐藤琢・11回から9)


 このたたかいの後、赤崎は県予選で宮古、江刺を破り、県大会初制覇。東北大会で白山、羽柴、福島硬友を破り、東北大会も制しました。全国大会こそ新潟コンマーシャルに敗れたものの、以降は岩手を代表するチームとして『クラブ全国ベスト8』『七十七、TDKと引き分け』『クラブカップ優勝』という成果をあげた、そのきっかけとなったのがあの大迫での試合だった、と私は勝手に思っています。

 あれから7年が経ちました。
 この試合の前までに積み重ねて来たものが火薬だとすれば、その火薬に火をつけたのがこの試合…そこから数年、見せ所は作り続けた赤崎でしたが、2009年は全体的に苦戦を強いられました。中軸選手こそ強力なパワーをもった選手がいるものの、基本はチームとしてまとまりの力でたたかう、時に敗れても、一つ一つの試合の経験を生かすというのがチームのスタイル。これを良き伝統としてこれからも刻んでいただければ、と思います。


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