おことわり・この記事は東日本大震災が起きる前に完成させた記事で、ここからの記事の文言の変更がききづらいため、完成させた状態そのままアップします。ご了承ください。
前章.力つきて…それでも。
都市対抗野球、参議院選挙。
私にとって、最大級ともいえるたたかいを日を置かずして二つ挑み、一つは予選リーグは突破したものの東北3強(これからは4強ですが)の前に先を歩むのを阻まれ、一つは全休だった前年の分までがむしゃらに取り組みはしたものの、後退という結果を突き付けられた。
それから何日もたたない内に高校野球が始まっていた。
2007年を最後に姿を消した大船渡農業高校野球部。
翌年には、大農野球部経験者の最後のたたかいを終え、その次の年には、大農の生徒経験者はすべて卒業して行った。2010年からは、完全に『地域の後輩』として大船渡東高校を見ていたけど、やはり夏の時期になると…一度は見に行こう、と考えるんですね。
それでも、参院戦後から任されるようになった仕事があり、どう考えても緒戦の平館との試合は見に行けない。
「勝ってくれよ…。」
この試合で負ければ、実に20年ぶりに母校(母校扱い)の試合を見る事なく“夏”を終える、という状況。さらに2年前と違い苦戦を強いられてもいたけど、幸い1点差でこの試合を勝ち抜くことができた。
そして、7月17日。
雫石球場で行われる花巻北高校との試合を見に行くこととなりました。
1.序盤、中盤…動く試合。
試合は始まった。
先発投手は船東が右本格派投手の小野寺君(写真右)。
花巻北が背番号3の右下手投げの鈴森君(写真左)。
船東は初回、前年好打を見せた小嶋君がヒットを放つものの0点に。
花巻北はその裏すかさず攻め立て、高橋君の安打⇒坂井君の犠打⇒吉田君の進塁打でツーアウトながら三塁にランナーをもって行くと、4番の照井君の適時打であっさりと先制点をあげた。その後瀬川君にヒット、及川君は四球で満塁とし、流れを一気にもって行くかと思われたが、一年秋からエースをはってるだけあって、小野寺君度胸よくこれ以上のピンチは防ぐ。
その後、船東は4回に5番の千葉君の安打⇒千葉君の犠打でツーアウト二塁にすると、7番の左の巧打者・稲沢君が右中間に強烈な打球を放ち二塁打で同点に追いつく。そして、6回、4番も兼ねる小野寺君がこの日初安打を飛ばすと、進塁打で二塁に。代打の山崎君が凡打に倒れツーアウトになったが、ここまで完全にタイミングのあっている稲沢君が、今度はレフトの横に抜ける三塁打を放ち、2-1と勝ち越した。
2.同点、暗転…そして、辛抱。
花巻北は過去に甲子園に出場した経験を持つ。1995年の準優勝を最後に、甲子園進出争いに顔を出すことは少なくなったけど、それでも古豪として夏の大会では見せ所も作るチームでもある。何より長く地域の方々に支えられているチームであることを忘れてはいけない。その支えは、チームが持つ“底力”の基になるのだから。
2-1と勝ち越した大船渡東。
しかし、そのリードはあっと言う間に消えた。
6回裏。先頭の瀬川君が出ると、及川君が送りバント。さらに瀬川君のサードスチールで得点圏に進めると、7番に入っていた鈴森君のショートゴロの間に瀬川君がかえり2-2。あっという間に同点へと引き戻された。
自分たちの力で新たなチームを作って来た大船渡東。
長く地域に支えられていることが原動力の花巻北。
両チームの熱いたたかいはあっと言う間に9回をむかえていた。
9回表の大船渡東。
先頭の三条一真君がライト前に痛烈な当たりを飛ばす。
大会前のケガもあり打順を下げた、と後の試合の実況で語られていたが、本来なら中軸打者という実力を見せた一打。さらにこの後鈴森君のボーク⇒ハンドリングのうまい守備を見せる佐々木龍君の犠打でワンアウト、ランナー三塁。
ここで打席には前打席でライト前ヒットを放っている紀室誓矢君。
「外野フライでも勝ち越しだ!」
打球はセンターフライ…三条君かえって「これで決まった!」と思ったときだった。
沸いていたのは花巻北サイドの方だった。
伊藤恵太選手が、タッチアップが早かったのを見逃さなかった。
得点未成立で一気にチェンジ。
⇒写真上は犠牲フライで生還し意気上がる大船渡東サイド…を撮ろうとしましたが、シャッターが切れたときには「得点未成立」になった後でした。写真下は九分九厘地獄に叩き落とされた状態から“生き返り”ムードを盛り返す花巻北サイドの様子です。
しかし、大船渡東も下を向く事なく、9回裏を3人で打たせとり、この熱い試合は延長戦にもつれ込むことになりました。
3.延長15回。極限までたたかった選手の“底力”《OFUNATO-Side》。
10回表。小嶋君が死球で出るも小野寺君の打球が正面突き併殺に。
10回裏。伊藤君が死球で出るも高橋君の打球が正面突き併殺に。
11回表。ツーアウトから稲沢君の二塁打が出るも無得点。
11回裏。二死から瀬川君、及川君の安打、重盗が出るも無得点。
12回表。三者凡退。
12回裏。三者凡退。
13回表。三者凡退。
13回裏。照井君のヒットは飛び出すものの無得点。
14回表。小西君のヒットは出るものの点には結び付けず…。
14回裏。及川君のヒット、伊藤君の四球で攻め立てるも無得点。
延長戦、1点勝負という極限状況下で攻勢を防ぎ切っていた両チーム。
試合はとうとう、高校野球ではこれ以上の試合はできないという延長15回をむかえた。
⇒テンションを落とす事なく、大きな声援を送り続けた大船渡東高校応援団。それは、反対側に陣取る花巻北高校応援団にしても同じことです。
15回表。先頭の打者として9回に“幻の勝ち越し犠牲フライ”を放った紀室君が出て来た。何球か見た後だった…と記憶しているが(この試合一球毎のスコアはつけていません)、この回が最後、という開き直りにも似た積極的な攻撃が、強烈な打球をライトにぶっ放つことになる。
「3つ(三塁打)だ!3つは行ける!」
実はこの試合、というか2008年から、フルに観戦ができた大船渡東の試合に関しては、テレコを使っての実況をしていた。この試合は予想外の長時間の試合になったので、用意していた120分テープでも収まらず、延長戦に入ってからはダイジェスト中継、と銘打ってランナーが得点圏に行ってからのみ実況、後はその回の結果のみを記録する形をとっていたが、この15回からは通常の形式に戻していた。
そのときの私の実況は以下の通りだった。
『紀室打った!打球は痛烈にライトの頭上を越えて行く!バッターの紀室俊足駆って二塁を蹴る、そして、三塁に…』
「止まった、スリーベース!」
そう言おうと思ったとき、紀室君は既にホームに向かって突っ走っていた。
『止ま…らない!何と何と何と一気にホームに向かっていった!ホームイン!何と紀室、大胆な走塁でランニングホームランをもぎ取りました!』
まさに「もぎ取った」ホームラン。
ここまで15回、奮闘を見せて来た高森君だったけど、ここでとうとう降板とあいまった。リリーフしたのは、背番号1、主将もつとめる高橋君だった。
新聞報道によれば、春先から背筋を痛め、投球練習ができるようになったのは大会一週間前から、という話だ。投球フォームを見ると、確かに右オーバースローからのバネ効かしたものではあったけど、使い方間違えれば体傷めるな、というフォームでもあった。
それでも、この大舞台によく間に合ったな、と。
高校野球やるからには、どうしてもこの選手権大会が大舞台。
それは甲子園でたたかおうが、それ以外の場でたたかおうが同じこと。
間に合ったマウンドに立った高橋君は、その後ランナーは許すものの、直球を武器に大船渡東に追加点は許さず、一つの役目を果たした。
⇒写真上は、ホームランをもぎ取った紀室君を迎える船東ベンチ。写真右はこの後リリーフした花巻北高校の高橋君です。
一つの試合の果てにやって来た試合の転換点。
このまま何もしなければ花巻北高は負ける。
だけども、このまま負けていいと思う人間は、このグラウンドに誰もいなかった。
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前章.力つきて…それでも。
都市対抗野球、参議院選挙。
私にとって、最大級ともいえるたたかいを日を置かずして二つ挑み、一つは予選リーグは突破したものの東北3強(これからは4強ですが)の前に先を歩むのを阻まれ、一つは全休だった前年の分までがむしゃらに取り組みはしたものの、後退という結果を突き付けられた。
それから何日もたたない内に高校野球が始まっていた。
2007年を最後に姿を消した大船渡農業高校野球部。
翌年には、大農野球部経験者の最後のたたかいを終え、その次の年には、大農の生徒経験者はすべて卒業して行った。2010年からは、完全に『地域の後輩』として大船渡東高校を見ていたけど、やはり夏の時期になると…一度は見に行こう、と考えるんですね。
それでも、参院戦後から任されるようになった仕事があり、どう考えても緒戦の平館との試合は見に行けない。
「勝ってくれよ…。」
この試合で負ければ、実に20年ぶりに母校(母校扱い)の試合を見る事なく“夏”を終える、という状況。さらに2年前と違い苦戦を強いられてもいたけど、幸い1点差でこの試合を勝ち抜くことができた。
そして、7月17日。
雫石球場で行われる花巻北高校との試合を見に行くこととなりました。
1.序盤、中盤…動く試合。
試合は始まった。
先発投手は船東が右本格派投手の小野寺君(写真右)。
花巻北が背番号3の右下手投げの鈴森君(写真左)。
船東は初回、前年好打を見せた小嶋君がヒットを放つものの0点に。
花巻北はその裏すかさず攻め立て、高橋君の安打⇒坂井君の犠打⇒吉田君の進塁打でツーアウトながら三塁にランナーをもって行くと、4番の照井君の適時打であっさりと先制点をあげた。その後瀬川君にヒット、及川君は四球で満塁とし、流れを一気にもって行くかと思われたが、一年秋からエースをはってるだけあって、小野寺君度胸よくこれ以上のピンチは防ぐ。
その後、船東は4回に5番の千葉君の安打⇒千葉君の犠打でツーアウト二塁にすると、7番の左の巧打者・稲沢君が右中間に強烈な打球を放ち二塁打で同点に追いつく。そして、6回、4番も兼ねる小野寺君がこの日初安打を飛ばすと、進塁打で二塁に。代打の山崎君が凡打に倒れツーアウトになったが、ここまで完全にタイミングのあっている稲沢君が、今度はレフトの横に抜ける三塁打を放ち、2-1と勝ち越した。
2.同点、暗転…そして、辛抱。
花巻北は過去に甲子園に出場した経験を持つ。1995年の準優勝を最後に、甲子園進出争いに顔を出すことは少なくなったけど、それでも古豪として夏の大会では見せ所も作るチームでもある。何より長く地域の方々に支えられているチームであることを忘れてはいけない。その支えは、チームが持つ“底力”の基になるのだから。
2-1と勝ち越した大船渡東。
しかし、そのリードはあっと言う間に消えた。
6回裏。先頭の瀬川君が出ると、及川君が送りバント。さらに瀬川君のサードスチールで得点圏に進めると、7番に入っていた鈴森君のショートゴロの間に瀬川君がかえり2-2。あっという間に同点へと引き戻された。
自分たちの力で新たなチームを作って来た大船渡東。
長く地域に支えられていることが原動力の花巻北。
両チームの熱いたたかいはあっと言う間に9回をむかえていた。
9回表の大船渡東。
先頭の三条一真君がライト前に痛烈な当たりを飛ばす。
大会前のケガもあり打順を下げた、と後の試合の実況で語られていたが、本来なら中軸打者という実力を見せた一打。さらにこの後鈴森君のボーク⇒ハンドリングのうまい守備を見せる佐々木龍君の犠打でワンアウト、ランナー三塁。
ここで打席には前打席でライト前ヒットを放っている紀室誓矢君。
「外野フライでも勝ち越しだ!」
打球はセンターフライ…三条君かえって「これで決まった!」と思ったときだった。
沸いていたのは花巻北サイドの方だった。
伊藤恵太選手が、タッチアップが早かったのを見逃さなかった。
得点未成立で一気にチェンジ。
⇒写真上は犠牲フライで生還し意気上がる大船渡東サイド…を撮ろうとしましたが、シャッターが切れたときには「得点未成立」になった後でした。写真下は九分九厘地獄に叩き落とされた状態から“生き返り”ムードを盛り返す花巻北サイドの様子です。
しかし、大船渡東も下を向く事なく、9回裏を3人で打たせとり、この熱い試合は延長戦にもつれ込むことになりました。
3.延長15回。極限までたたかった選手の“底力”《OFUNATO-Side》。
10回表。小嶋君が死球で出るも小野寺君の打球が正面突き併殺に。
10回裏。伊藤君が死球で出るも高橋君の打球が正面突き併殺に。
11回表。ツーアウトから稲沢君の二塁打が出るも無得点。
11回裏。二死から瀬川君、及川君の安打、重盗が出るも無得点。
12回表。三者凡退。
12回裏。三者凡退。
13回表。三者凡退。
13回裏。照井君のヒットは飛び出すものの無得点。
14回表。小西君のヒットは出るものの点には結び付けず…。
14回裏。及川君のヒット、伊藤君の四球で攻め立てるも無得点。
延長戦、1点勝負という極限状況下で攻勢を防ぎ切っていた両チーム。
試合はとうとう、高校野球ではこれ以上の試合はできないという延長15回をむかえた。
⇒テンションを落とす事なく、大きな声援を送り続けた大船渡東高校応援団。それは、反対側に陣取る花巻北高校応援団にしても同じことです。
15回表。先頭の打者として9回に“幻の勝ち越し犠牲フライ”を放った紀室君が出て来た。何球か見た後だった…と記憶しているが(この試合一球毎のスコアはつけていません)、この回が最後、という開き直りにも似た積極的な攻撃が、強烈な打球をライトにぶっ放つことになる。
「3つ(三塁打)だ!3つは行ける!」
実はこの試合、というか2008年から、フルに観戦ができた大船渡東の試合に関しては、テレコを使っての実況をしていた。この試合は予想外の長時間の試合になったので、用意していた120分テープでも収まらず、延長戦に入ってからはダイジェスト中継、と銘打ってランナーが得点圏に行ってからのみ実況、後はその回の結果のみを記録する形をとっていたが、この15回からは通常の形式に戻していた。
そのときの私の実況は以下の通りだった。
『紀室打った!打球は痛烈にライトの頭上を越えて行く!バッターの紀室俊足駆って二塁を蹴る、そして、三塁に…』
「止まった、スリーベース!」
そう言おうと思ったとき、紀室君は既にホームに向かって突っ走っていた。
『止ま…らない!何と何と何と一気にホームに向かっていった!ホームイン!何と紀室、大胆な走塁でランニングホームランをもぎ取りました!』
まさに「もぎ取った」ホームラン。
ここまで15回、奮闘を見せて来た高森君だったけど、ここでとうとう降板とあいまった。リリーフしたのは、背番号1、主将もつとめる高橋君だった。
新聞報道によれば、春先から背筋を痛め、投球練習ができるようになったのは大会一週間前から、という話だ。投球フォームを見ると、確かに右オーバースローからのバネ効かしたものではあったけど、使い方間違えれば体傷めるな、というフォームでもあった。
それでも、この大舞台によく間に合ったな、と。
高校野球やるからには、どうしてもこの選手権大会が大舞台。
それは甲子園でたたかおうが、それ以外の場でたたかおうが同じこと。
間に合ったマウンドに立った高橋君は、その後ランナーは許すものの、直球を武器に大船渡東に追加点は許さず、一つの役目を果たした。
⇒写真上は、ホームランをもぎ取った紀室君を迎える船東ベンチ。写真右はこの後リリーフした花巻北高校の高橋君です。
一つの試合の果てにやって来た試合の転換点。
このまま何もしなければ花巻北高は負ける。
だけども、このまま負けていいと思う人間は、このグラウンドに誰もいなかった。
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