こんにちは。伊東です。
高校野球選手権…夏の大会ですか、岩手から甲子園に出場するのは、センバツ準優勝で“大本命”とまで言われた花巻東という結果に終わりました。ただ、このチームが岩手代表の座をつかむのも大変だったようで、選抜の後練習試合でも中々勝てず「夏はダメじゃ…」という心境にもなったとか。センバツ後の「色々な変化」に振り回される部分もあって大変だったとは思いますが、それ乗り越えての岩手代表獲得、おめでとうございます。
心臓いじった直後でしたが、この夏の大会は5試合観戦させていただきました。それぞれの試合のリポートを書かせていただきます。なお、記事中の敬称は略させていただきます。どうかご了承ください。
・二回戦 大船渡東 6-1 盛岡商高
・三回戦 大船渡東 0-7 盛岡第四(7回コールド)
まずは、母校扱い(※1)の大船渡東高校からです。
今年の緒戦の相手は甲子園出場経験5回を数える盛岡商高。この試合でも1回、3回と得点圏にまでランナーを進めますが、船東先発の千田耕平はじめ守備陣が踏ん張ると、3回に四死球にエラーからめて満塁にすると、三番に入っていた小嶋がライトオーバーの三塁打を放ち、三者生還。さらに四番の鈴木も適時打を放ち盛商先発の福士をKO、4-0と大きくリードします。
船東はその後も千田→6回から小野寺のリレーでペースを握り、5回にも佐々木祐規の適時打で加点しました。盛商は主将の小野田が奮闘し、8回に幅の適時打で1点返し、さらにランナー二、三塁と攻め立てますが、岩館が三振、代打の吉野の強烈な打球は投手ライナーのダブルプレーとなってしまいました。
船東は8回にも小野寺の適時打でダメをおすと、9回の盛商の代打攻勢もかわし2年連続で初戦を突破しました。
次の試合は第4シード・岩泉をやぶった盛岡第四。例年「私学強豪」相手にもひるまない力をもつチームです。船東は去年も二回戦で第四とあたり、グウの音も出ないくらいの完敗を喫したチームでしたが、今年はどうか。期待して再び球場に向かいました。
初回、去年の試合で12球粘った亘理がライト前ヒット。2回にも小野寺が二塁強襲の安打を放ちますが、前後がつながらず点に結び付けられなかった後に四高にムードをもって行かれてしまいました。
2回に安恒の適時打、3回には大石、谷地、尾形、石川の適時打で4失点。特に3回は一つのエラーで流れを変えてしまった痛恨のイニングでした。
船東は4回から先発の小野寺に代えて千田をリリーフ。5回にはこの日スタメンに入った紀室の安打で反撃機をつかみましたが、ちぐはぐな攻めで生かす事ができず、6回には阿部の三塁打と暴投で2点を失い、次の回のクリンアップの攻撃も安恒の対角線の効いた投球の前に、鈴木の特大ファールこそ出ましたが反撃に至らず0-7で敗れました。
今年の船東で、まず目についたのが「レギュラー争いの激しさ」。実際の状態見ていないので何とも言えませんが、大会前の選手名簿2つ(朝日と岩手日報)一つ見ても、三年4人と、エースの小野寺の他は入れ替わり激しく、三番を打った小嶋は背番号14。千田、小野寺の投手二人は、試合を任せられるという意味では同等の力をもつ事、ほぼ同等の力をもつ選手が、日頃から激しいレギュラー争いをしている様子が、選手起用や個々のプレーからも見えます。
ただ、盛岡第四との試合ではバントで送れなかった、一つのエラーが出た。そこからでも試合の流れが大きく変わってしまいました。その点の“厳しさ”を教訓として、チーム全体として取り組み進めて行けば、よりいいチームになるのではないでしょうか。
そして、学業の途中で学校が変わったりして心身ともに大変な状況の中、少ない人数でチームを支えた佐々木、鈴木、亘理、田中各選手には「あなたたちの頑張りが船東野球部の“礎”になった。本当にお疲れさまでした。」と声をかけてあげたいです。
※1 私の出身校大船渡農業をはじめ、大船渡工業、広田水産、高田の実業学科が統合されて大船渡東高校に。
・二回戦 葛巻 13-3 紫波総合(6回コールド)
先述した「船東-盛商」の試合後“12人の野球部同士の対戦”という事でこの試合も見て行くことにしました。私の高校野球最後の試合も「13人(大農)と11人(岩谷堂)の対戦」という事でTVに取り上げられたこともありましたので、他人事として思えなかったんです。
で、試合が始まりましたが、紫波高校の方に“異変”が。
背番号1の三年生選手が試合出場はおろか、ベンチにもいません。この日先発したのは一年の兼平。ストレートの球威、変化球など中々のものをもっていましたが、残念ながらその実力をコントロールできなかった様子が見えました。捕手もおそらく“急造”でしょう。リズムを作れず戸惑っていた間に、葛巻が「ランナー出す」→「先に進める」→「的確に返す」という攻めを見せ、そこに紫波守備陣の与四死球や失策もからみ、4回までで7-1と差を広げます。
紫波は5回、斎藤主将の三塁打後、青山の内野ゴロの間に一点。さらに丸本が頭部死球で出ると、臨時代走に斎藤が再び登場。盗塁など果敢な走塁見せ三塁に進み、小川の適時打で4点差にまで追い上げましたが、葛巻が大崩れしたのはこの場面だけで、5回裏には一安打で4点奪い、6回にも代わった斎藤主将がストライクを入れることができず、最後は押し出しでサヨナラコールドが成立しました。
葛巻は「自分たちでできることはしっかりやる」というのが徹底していました。8安打はすべて単打。投手陣も吉沢、廻立(まったつ)両投手とも余計な四球は与えず投げ抜きました。この後の試合で不来方にも善戦しましたが、この試合を見て納得しました。
紫波は…もう一人の三年生が出場できなかったのばかりが残念でした。個々の力はあるだけに、それをチームとしてどう生かすか。これから追求してください。
・三回戦 花巻東 11-3 岩谷堂(8回コールド)
全国区で注目されている花巻東に、岩谷堂がどう立ち向かうか。
地力では花巻東に分がありますが、試合はしてみなければ何が起きるか分からない。花巻東がどんなチームか、というのと同時に、岩谷堂がどうこの強豪に立ち向かうかというのにも注目して見ていました。
初回、花巻東の“地力”が早速爆発。
柏葉二塁打→佐藤涼平犠打→川村の適時打で先制→猿川のレフトへのホームランであっと言う間に先制。
この時点では「花巻東のワンサイドか」という思いもしました。
しかし、岩谷堂先発の及川はじめ守備陣は二回の「満塁で四番打者」という大ピンチを切り抜けると、二回裏に球場を沸かせる攻勢を見せます。
この日の花巻東の先発は二年成長株の吉田。左上手投げからの直球とカーブを織り混ぜて打者を打ち取るタイプの投手。この夏の大会勝ち抜くためにはこの投手の存在がカギと言われていました。
そのキーパーソンから6番の加藤が安打。7番の菅野が送りバントで、ツーアウトながらランナーを二塁に送り、8番の伊藤優。ワンボールからの甘く入った球をフルスイングした打球は…レフトスタンドへと持って行きました。
岩谷堂はエースの及川が辛抱強く投げ、ランナーは出しても、内野陣の厳しいチェックで余計な進塁を防ぎ、余計な失点は防ごうとしていましたが、それでも花巻東は4回に横倉の適時打で2点追加。岩谷堂も5回に伊藤優、阿部浩也の安打で一、三塁の好機を作り、2年の阿部がライトへ犠牲フライを放ち3-5と追いすがりますが…。
6回から菊池雄星に次ぐ投手の猿川が登板。岩谷堂を1安打に封ずると、6回に千葉の犠牲フライ、7回に岩谷堂の唯一のエラーと、川村の二塁打で3点。8回には途中からライトに入っていた佐藤の本塁打。
終盤で怒涛の攻撃を見せた花巻東。
しかし、岩谷堂はやることは全てやっていた。自分たちが先に進むための一つ一つのプレーはしっかりしたものでした。平均的な高校生が相手なら、簡単に勝てる試合ではなかったはず。
8回コールド。3-11。
結果だけ見れば「有名な高校が無名の高校を一蹴した」だけの試合だったかもしれない。
ほんでも、あえて言わせてもらえれば…その「無名の高校生」が「センバツ準優勝したチーム」に勝とうと、対等にたたかおうと。そういう姿勢が強く見え、花巻東もまた手加減なぞせずに出場した選手が全力を尽くした。
スコア以上の名勝負でした。
・三回戦 盛岡一高 6-5 花北青雲
その「スコア以上の名勝負」の後に行われたのがこの試合。
前年ベスト4に進んだメンバーが多く残る盛岡一高。
花北青雲もこの大会“対抗”と言われた一関学院を破ってこの試合にたどり着きました。
序盤は盛岡一高のペースでした。
初回に千葉の二塁打後、山崎の適時打で先制。
更に赤沢の本塁打で初回に3点。
3回にも菊池の適時打で1点。
5回には高橋の二塁打の後、赤沢にこの日二本目の本塁打。
この時点で席を立つ人も少なからずいました。
しかし、花北の反撃はここからはじまりました。
6回裏。5回まで盛一の菊池の前に1安打。
その打線が6回に爆発します。
8番の佐々木京介が安打、続く嶋が送り、川越も安打で一、三塁とした後、先の回にチーム初安打を放った久保田主将が適時打を放ちまず1点の後、4番の吉田がレフトスタンドへの3点ホームラン。一気呵成の攻撃に球場が沸き返り、ムードは一転、花巻青雲に傾きました。
花北は8回にも嶋の四球を生かし、久保田主将が再び適時打を放ち、6-5と一点差に。ここまで来ると、流れは花北青雲にありましたが、盛岡一が辛うじてその勢いを止めた格好となりました。
7回7点差でコールド。
5回までの試合の流れを見ると、そういう結果になってもおかしくない程盛一に分がありましたが、それを跳ね返したのが主将の久保田や4番の吉田といった花北3年生の意地でした。一関学院戦で好投した佐藤はじめ、レギュラーの半分が残ります。来年どういうチームを作るか。楽しみにしたいですね。
盛一は終盤花北の怒涛の反撃にあいましたが、盛一自身としては崩れた野球はしなかったと思います。取られた点は「花北をほめてくれ」という中身。それでもこの試合勝ち抜いたわけですから「いい所まで行くぞ」とは思いましたが…。
緒戦の伊保内、この後の金ヶ崎、一関一高、盛岡大附。どの試合も楽な試合をしませんでした。そんでもそういう試合を続けて勝ち上がる様子を見て「甲子園に進ませたい」チームだ、と思いましたが、残念ながら決勝戦、後一歩及びませんでした。
16年前に決勝まで進んだ当時の監督の杉田清彦さんが2007年から再び指揮を執り、コーチの渡辺史隆さんも16年前の決勝を体験した選手。あの時は久慈商に7回までリードしていたものの8回に逆転され、9回に一挙8点失う悔しい敗退となりました。それから雌伏を経て、今年ようなすばらしいチームを選手達とともに作り上げました。
岩手大会も終わり、今年参加した75チームのうち、74チームのたたかいは終わりました。全国の舞台に挑めるのは花巻東。「岩手の球児のたたかい」の中から生み出された、紛れもない(いつもそうだけど)岩手代表のチームです。
花巻東野球部の活躍を心から願うと同時に、ここまで頑張って来た3年生には「お疲れさま」と、そして1、2年生には「様々難関あっと思うけど、折れずに頑張れよ」とエールを送らせていただきまして、馬鹿なりに見た岩手の高校野球に関しての記事終わらせていただきます。
高校野球選手権…夏の大会ですか、岩手から甲子園に出場するのは、センバツ準優勝で“大本命”とまで言われた花巻東という結果に終わりました。ただ、このチームが岩手代表の座をつかむのも大変だったようで、選抜の後練習試合でも中々勝てず「夏はダメじゃ…」という心境にもなったとか。センバツ後の「色々な変化」に振り回される部分もあって大変だったとは思いますが、それ乗り越えての岩手代表獲得、おめでとうございます。
心臓いじった直後でしたが、この夏の大会は5試合観戦させていただきました。それぞれの試合のリポートを書かせていただきます。なお、記事中の敬称は略させていただきます。どうかご了承ください。
・二回戦 大船渡東 6-1 盛岡商高
・三回戦 大船渡東 0-7 盛岡第四(7回コールド)
まずは、母校扱い(※1)の大船渡東高校からです。
今年の緒戦の相手は甲子園出場経験5回を数える盛岡商高。この試合でも1回、3回と得点圏にまでランナーを進めますが、船東先発の千田耕平はじめ守備陣が踏ん張ると、3回に四死球にエラーからめて満塁にすると、三番に入っていた小嶋がライトオーバーの三塁打を放ち、三者生還。さらに四番の鈴木も適時打を放ち盛商先発の福士をKO、4-0と大きくリードします。
船東はその後も千田→6回から小野寺のリレーでペースを握り、5回にも佐々木祐規の適時打で加点しました。盛商は主将の小野田が奮闘し、8回に幅の適時打で1点返し、さらにランナー二、三塁と攻め立てますが、岩館が三振、代打の吉野の強烈な打球は投手ライナーのダブルプレーとなってしまいました。
船東は8回にも小野寺の適時打でダメをおすと、9回の盛商の代打攻勢もかわし2年連続で初戦を突破しました。
次の試合は第4シード・岩泉をやぶった盛岡第四。例年「私学強豪」相手にもひるまない力をもつチームです。船東は去年も二回戦で第四とあたり、グウの音も出ないくらいの完敗を喫したチームでしたが、今年はどうか。期待して再び球場に向かいました。
初回、去年の試合で12球粘った亘理がライト前ヒット。2回にも小野寺が二塁強襲の安打を放ちますが、前後がつながらず点に結び付けられなかった後に四高にムードをもって行かれてしまいました。
2回に安恒の適時打、3回には大石、谷地、尾形、石川の適時打で4失点。特に3回は一つのエラーで流れを変えてしまった痛恨のイニングでした。
船東は4回から先発の小野寺に代えて千田をリリーフ。5回にはこの日スタメンに入った紀室の安打で反撃機をつかみましたが、ちぐはぐな攻めで生かす事ができず、6回には阿部の三塁打と暴投で2点を失い、次の回のクリンアップの攻撃も安恒の対角線の効いた投球の前に、鈴木の特大ファールこそ出ましたが反撃に至らず0-7で敗れました。
今年の船東で、まず目についたのが「レギュラー争いの激しさ」。実際の状態見ていないので何とも言えませんが、大会前の選手名簿2つ(朝日と岩手日報)一つ見ても、三年4人と、エースの小野寺の他は入れ替わり激しく、三番を打った小嶋は背番号14。千田、小野寺の投手二人は、試合を任せられるという意味では同等の力をもつ事、ほぼ同等の力をもつ選手が、日頃から激しいレギュラー争いをしている様子が、選手起用や個々のプレーからも見えます。
ただ、盛岡第四との試合ではバントで送れなかった、一つのエラーが出た。そこからでも試合の流れが大きく変わってしまいました。その点の“厳しさ”を教訓として、チーム全体として取り組み進めて行けば、よりいいチームになるのではないでしょうか。
そして、学業の途中で学校が変わったりして心身ともに大変な状況の中、少ない人数でチームを支えた佐々木、鈴木、亘理、田中各選手には「あなたたちの頑張りが船東野球部の“礎”になった。本当にお疲れさまでした。」と声をかけてあげたいです。
※1 私の出身校大船渡農業をはじめ、大船渡工業、広田水産、高田の実業学科が統合されて大船渡東高校に。
・二回戦 葛巻 13-3 紫波総合(6回コールド)
先述した「船東-盛商」の試合後“12人の野球部同士の対戦”という事でこの試合も見て行くことにしました。私の高校野球最後の試合も「13人(大農)と11人(岩谷堂)の対戦」という事でTVに取り上げられたこともありましたので、他人事として思えなかったんです。
で、試合が始まりましたが、紫波高校の方に“異変”が。
背番号1の三年生選手が試合出場はおろか、ベンチにもいません。この日先発したのは一年の兼平。ストレートの球威、変化球など中々のものをもっていましたが、残念ながらその実力をコントロールできなかった様子が見えました。捕手もおそらく“急造”でしょう。リズムを作れず戸惑っていた間に、葛巻が「ランナー出す」→「先に進める」→「的確に返す」という攻めを見せ、そこに紫波守備陣の与四死球や失策もからみ、4回までで7-1と差を広げます。
紫波は5回、斎藤主将の三塁打後、青山の内野ゴロの間に一点。さらに丸本が頭部死球で出ると、臨時代走に斎藤が再び登場。盗塁など果敢な走塁見せ三塁に進み、小川の適時打で4点差にまで追い上げましたが、葛巻が大崩れしたのはこの場面だけで、5回裏には一安打で4点奪い、6回にも代わった斎藤主将がストライクを入れることができず、最後は押し出しでサヨナラコールドが成立しました。
葛巻は「自分たちでできることはしっかりやる」というのが徹底していました。8安打はすべて単打。投手陣も吉沢、廻立(まったつ)両投手とも余計な四球は与えず投げ抜きました。この後の試合で不来方にも善戦しましたが、この試合を見て納得しました。
紫波は…もう一人の三年生が出場できなかったのばかりが残念でした。個々の力はあるだけに、それをチームとしてどう生かすか。これから追求してください。
・三回戦 花巻東 11-3 岩谷堂(8回コールド)
全国区で注目されている花巻東に、岩谷堂がどう立ち向かうか。
地力では花巻東に分がありますが、試合はしてみなければ何が起きるか分からない。花巻東がどんなチームか、というのと同時に、岩谷堂がどうこの強豪に立ち向かうかというのにも注目して見ていました。
初回、花巻東の“地力”が早速爆発。
柏葉二塁打→佐藤涼平犠打→川村の適時打で先制→猿川のレフトへのホームランであっと言う間に先制。
この時点では「花巻東のワンサイドか」という思いもしました。
しかし、岩谷堂先発の及川はじめ守備陣は二回の「満塁で四番打者」という大ピンチを切り抜けると、二回裏に球場を沸かせる攻勢を見せます。
この日の花巻東の先発は二年成長株の吉田。左上手投げからの直球とカーブを織り混ぜて打者を打ち取るタイプの投手。この夏の大会勝ち抜くためにはこの投手の存在がカギと言われていました。
そのキーパーソンから6番の加藤が安打。7番の菅野が送りバントで、ツーアウトながらランナーを二塁に送り、8番の伊藤優。ワンボールからの甘く入った球をフルスイングした打球は…レフトスタンドへと持って行きました。
岩谷堂はエースの及川が辛抱強く投げ、ランナーは出しても、内野陣の厳しいチェックで余計な進塁を防ぎ、余計な失点は防ごうとしていましたが、それでも花巻東は4回に横倉の適時打で2点追加。岩谷堂も5回に伊藤優、阿部浩也の安打で一、三塁の好機を作り、2年の阿部がライトへ犠牲フライを放ち3-5と追いすがりますが…。
6回から菊池雄星に次ぐ投手の猿川が登板。岩谷堂を1安打に封ずると、6回に千葉の犠牲フライ、7回に岩谷堂の唯一のエラーと、川村の二塁打で3点。8回には途中からライトに入っていた佐藤の本塁打。
終盤で怒涛の攻撃を見せた花巻東。
しかし、岩谷堂はやることは全てやっていた。自分たちが先に進むための一つ一つのプレーはしっかりしたものでした。平均的な高校生が相手なら、簡単に勝てる試合ではなかったはず。
8回コールド。3-11。
結果だけ見れば「有名な高校が無名の高校を一蹴した」だけの試合だったかもしれない。
ほんでも、あえて言わせてもらえれば…その「無名の高校生」が「センバツ準優勝したチーム」に勝とうと、対等にたたかおうと。そういう姿勢が強く見え、花巻東もまた手加減なぞせずに出場した選手が全力を尽くした。
スコア以上の名勝負でした。
・三回戦 盛岡一高 6-5 花北青雲
その「スコア以上の名勝負」の後に行われたのがこの試合。
前年ベスト4に進んだメンバーが多く残る盛岡一高。
花北青雲もこの大会“対抗”と言われた一関学院を破ってこの試合にたどり着きました。
序盤は盛岡一高のペースでした。
初回に千葉の二塁打後、山崎の適時打で先制。
更に赤沢の本塁打で初回に3点。
3回にも菊池の適時打で1点。
5回には高橋の二塁打の後、赤沢にこの日二本目の本塁打。
この時点で席を立つ人も少なからずいました。
しかし、花北の反撃はここからはじまりました。
6回裏。5回まで盛一の菊池の前に1安打。
その打線が6回に爆発します。
8番の佐々木京介が安打、続く嶋が送り、川越も安打で一、三塁とした後、先の回にチーム初安打を放った久保田主将が適時打を放ちまず1点の後、4番の吉田がレフトスタンドへの3点ホームラン。一気呵成の攻撃に球場が沸き返り、ムードは一転、花巻青雲に傾きました。
花北は8回にも嶋の四球を生かし、久保田主将が再び適時打を放ち、6-5と一点差に。ここまで来ると、流れは花北青雲にありましたが、盛岡一が辛うじてその勢いを止めた格好となりました。
7回7点差でコールド。
5回までの試合の流れを見ると、そういう結果になってもおかしくない程盛一に分がありましたが、それを跳ね返したのが主将の久保田や4番の吉田といった花北3年生の意地でした。一関学院戦で好投した佐藤はじめ、レギュラーの半分が残ります。来年どういうチームを作るか。楽しみにしたいですね。
盛一は終盤花北の怒涛の反撃にあいましたが、盛一自身としては崩れた野球はしなかったと思います。取られた点は「花北をほめてくれ」という中身。それでもこの試合勝ち抜いたわけですから「いい所まで行くぞ」とは思いましたが…。
緒戦の伊保内、この後の金ヶ崎、一関一高、盛岡大附。どの試合も楽な試合をしませんでした。そんでもそういう試合を続けて勝ち上がる様子を見て「甲子園に進ませたい」チームだ、と思いましたが、残念ながら決勝戦、後一歩及びませんでした。
16年前に決勝まで進んだ当時の監督の杉田清彦さんが2007年から再び指揮を執り、コーチの渡辺史隆さんも16年前の決勝を体験した選手。あの時は久慈商に7回までリードしていたものの8回に逆転され、9回に一挙8点失う悔しい敗退となりました。それから雌伏を経て、今年ようなすばらしいチームを選手達とともに作り上げました。
岩手大会も終わり、今年参加した75チームのうち、74チームのたたかいは終わりました。全国の舞台に挑めるのは花巻東。「岩手の球児のたたかい」の中から生み出された、紛れもない(いつもそうだけど)岩手代表のチームです。
花巻東野球部の活躍を心から願うと同時に、ここまで頑張って来た3年生には「お疲れさま」と、そして1、2年生には「様々難関あっと思うけど、折れずに頑張れよ」とエールを送らせていただきまして、馬鹿なりに見た岩手の高校野球に関しての記事終わらせていただきます。